フランチャイズへの加盟を検討するとき、本部から「投資回収◯年」という試算を示されることがあります。計算式自体は単純ですが、分母にどの利益を使うかによって、同じ店舗・同じ売上でも結果は大きく変わります。ここでは投資回収期間の基本的な計算式を確認したうえで、損益分岐点や売上が想定を下回った場合の変化を仮の数値で整理し、本部の試算を読むときの確認ポイントをまとめます。なお、飲食フランチャイズの回収期間について公的機関が示す目安の年数は見当たらなかったため、本記事では「◯年が目安」という書き方はせず、計算の考え方を中心に解説します。
投資回収期間とは、開業にかかった総投資額を、その店舗が生み出す利益で何年かけて回収できるかを示す指標です。日本フランチャイズチェーン協会(JFA)は、投資回収期間は「総投資額÷(減価償却費+税引き後利益)」で計算するのが普通であるとしたうえで、「チェーンによっては総投資額には物件取得費が含まれてなかったり、税引き後利益でなく営業利益等により計算している場合もある。使用する数値により投資額や投資回収期間は大きな差が出るので、確認が必要である」と指摘しています。
総投資額には、物件取得費・内外装工事費・厨房設備費・加盟金・保証金・開業時の運転資金などが含まれますが、どこまでを含めるかは本部によって異なります。総投資額の内訳については、開業資金の内訳を解説した記事もあわせてご覧ください。
参照元:日本フランチャイズチェーン協会「8.加盟に当たっての本部の選び方」(https://www.jfa-fc.or.jp/particle/3600.html)
先述のJFAの指摘のとおり、回収期間の計算に使う「利益」の定義によって、結果は大きく変わります。ここでは仮に、総投資額5,000万円(設備投資等4,000万円を含む)、月商700万円、変動費率35%(食材原価・ロイヤリティなど)、月間の固定費(減価償却費を除く)400万円(人件費250万円+家賃90万円+水道光熱費その他60万円)の店舗を想定します。設備投資等4,000万円を10年の定額法で減価償却すると仮定すると、減価償却費は年400万円(月33.3万円)です。
このとき、月間の営業利益(減価償却費を含む費用を差し引いた後の利益)は「700万円×(1-0.35)-(400万円+33.3万円)」で約21.7万円、年間では約260万円です。これだけで回収期間を計算すると「5,000万円÷260万円」で約19.2年かかります。一方、JFAの式にならって減価償却費を足し戻すと、月間は「21.7万円+33.3万円」で55万円、年間では660万円となり、回収期間は「5,000万円÷660万円」で約7.6年です。同じ店舗・同じ売上でも、減価償却費を足し戻すかどうかだけで、回収期間の見え方は12年以上変わります。本部から示された試算が、どちらの考え方で計算されているかを確認する必要があります。
※この試算はあくまで説明のための仮の数値であり、実在する店舗の相場や実績を示すものではありません。税金・借入金の利息・返済・運転資金の増減は考慮していない簡易な例です。
投資回収を考えるうえでは、まず利益がゼロになる売上の水準(損益分岐点)を押さえておくと、売上の変化が利益にどう響くかが分かりやすくなります。損益分岐点売上高は、固定費を「1-変動費率」で割って求められます。
先ほどの仮の店舗で計算すると、減価償却費を含む月間の固定費433.3万円を基準にした損益分岐点売上高は、「433.3万円÷(1-0.35)」で約667万円です。月商700万円という前提は、この水準を約33万円(約5%)上回ったところにあることになります。
参照元:中小企業基盤整備機構「J-Net21 損益分岐点の計算方法と経営改善に向けた活用方法を教えてください。」(https://j-net21.smrj.go.jp/solution/qa/accounting/Q0240.html)
中小企業庁の資料では、本部から収益予測を示された場合に、収益予測は売上を最小に見積もり、必要経費は最大に見積もることも大切だとされています。ここでは、先ほどの仮の店舗を基準に、月商が±10%変動した場合の変化を試算します。
| 月商(仮) | 月間営業利益 | 年間営業利益 | 回収期間(営業利益のみ) | 回収期間(営業利益+減価償却費) |
|---|---|---|---|---|
| 630万円(基準の−10%) | 約−23.8万円(赤字) | 約−286万円 | 回収できない | 約43.9年 |
| 700万円(基準) | 約21.7万円 | 約260万円 | 約19.2年 | 約7.6年 |
| 770万円(基準の+10%) | 約67.2万円 | 約806万円 | 約6.2年 | 約4.2年 |
月商が基準から10%下がると、月間の営業利益が赤字になり、減価償却費を足し戻しても回収期間は40年を超える計算になります。逆に10%上がると、回収期間は半分近くまで縮みます。投資回収期間は、売上のわずかな前提の違いにも大きく左右されることが分かります。本部の試算を確認するときは、基準となる売上が、既存店のどの時期・どの水準の実績に基づくものかを確認しておきたいところです。
※この試算も仮の数値による説明であり、実在する店舗の相場や実績を示すものではありません。
中小企業庁の資料では、フランチャイズ契約は本部と、独立した事業者である加盟店との事業者間の契約と位置づけられており、本部から売上予測を開示された場合には、どのようなデータに基づいているのかを納得がいくまで説明を求めることが大切だとされています。また、既存店舗の収益の平均値等から作成したモデル収益を示す場合は、それが予想売上げ等ではないことを加盟希望者が十分に理解できるよう対応する必要があるとされています。
これらを踏まえると、本部の試算を受け取った際には、次の点を確認しておくと、自分の条件に置き換えて検算しやすくなります。
| 確認項目 | 確認したい内容 |
|---|---|
| 総投資額の範囲 | 物件取得費・運転資金・開業前研修費などが含まれているか |
| 利益の定義 | 営業利益か税引後利益か、減価償却費を含めているか |
| 売上の前提 | どの店舗の、どの時期の実績に基づく数値か。既存店の平均値かモデル収益か |
| 固定費・変動費の内訳 | 人件費・家賃・ロイヤリティなどが、どのような前提で見積もられているか |
| 法定開示書面との整合 | 直近3事業年度の貸借対照表・損益計算書など、開示が義務付けられている書類と試算の前提が一致しているか |
法定開示書面に含まれる財務情報の確認方法は、本部の経営状態の見極め方を解説した記事でも扱っています。あわせてご確認ください。
参照元:中小企業庁「フランチャイズ契約を締結する前にチェックすべきポイント~経営者としての自覚を」(2025年6月、https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2021/download/r3fy-FC-all.pdf)、中小小売商業振興法第11条・同法施行規則第10条第1項第4号(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/348M50000400100)
法人として新規事業に飲食フランチャイズを選ぶ場合、社内の稟議や金融機関への説明では、単一の楽観的な試算だけでなく、複数のシナリオで回収期間を示せるようにしておくと、説明の根拠が伝わりやすくなります。前章の表のように、基準となる売上に加えて、下振れした場合・上振れした場合の両方を示し、どの前提に立っているかを明記する進め方です。
資金調達・融資審査に向けた事業計画書の作り方は、資金調達を解説した記事で扱っています。法人の新規事業として飲食フランチャイズを選ぶ際の検討軸は、法人が飲食FCを選ぶ理由を解説した記事もあわせてご確認ください。
投資回収期間は、本部選びの重要な判断材料のひとつですが、回収期間の数値だけで判断すると、売上が計画を下回った場合の資金繰りを見落とすリスクがあります。前章までの試算で見たとおり、売上が想定を下回ると営業利益が赤字になる可能性があり、その状態が続く場合に、どの段階で見直しや撤退を判断するかを、契約前に考えておくことも大切です。撤退時に確認しておきたい違約金や契約条件、失敗の典型的な原因については、それぞれ別記事で解説しています。
投資回収期間の計算式自体はシンプルですが、総投資額に何を含めるか、利益を営業利益と税引後利益のどちらで見るか、減価償却費を足し戻すかによって、結果は大きく変わります。本部から試算を受け取ったら、その前提(総投資額の範囲・利益の定義・売上の根拠)を確認したうえで、自分の条件に置き換えて複数のシナリオで検算し、納得したうえで判断するようにしましょう。
最低賃金の引き上げはフランチャイズの収支にどう影響する?を見る
選ばれるレストランになるためには、まずは商圏内のターゲット需要を捉えることが、後発参入でも安定した収益基盤を築くポイントです。
そこで、本サイト「愛されて稼げる!レストランフランチャイズガイド」では、来店動機が明確な「ファミリー向け外食」「デート・女子会」「法事・宴会」の各領域において、おすすめの3ブランドを紹介しています。ぜひ参考にしてください。
選ばれる店になるためには、まずは商圏内のターゲットの需要を捉えることが、後発参入でも安定した収益基盤を築くポイントです。 そこで、来店動機が明確な「ファミリー向け外食」「デート・女子会」「法事・宴会」の各領域において、おすすめの3ブランドを紹介します。(FC店舗数は2025年12月末日時点のものです)
ファミリー向け外食需要
すかいらーくグループのインフラを活用できる全国唯一のファミレスFC。約3,100店舗の規模を活かした効率的な調達(※1)に加え、遠方出店も物流費は本部が負担。大手ならではの強みで安定経営を支援。
看板の「弾丸ハンバーグ」を中心に、スイーツ・キッズメニューが充実し、家族連れ外食需要だけでなくカフェ需要にも対応。全時間帯での集客が期待できます。
26店舗
デート・女子会需要
都市部を中心に出店するイタリアンバル。100種類以上のワインや選べるピザ・パスタが売りで、コアターゲットである20~40代の男女から支持されており、デートや女子会の需要に対応しています。
ドリンクはセルフスタイル、フードは仕込み済みのものを温めて盛り付ける方式を採用。人件費を抑え、収益率を高めるオペレーションを実現しています。
3店舗
法事・宴会需要
片道1時間の超広域商圏をカバーする、創業50年以上の歴史と実績を誇るカニ料理専門店。
郊外の広大な敷地を活かせる大型店舗FCで、七五三や還暦祝いといった慶事、法事などの「ハレの日需要」を獲得します。
予約中心で客単価5,000円(※2)を実現しており、流行に左右されない堅実なビジネスモデルを構築することが可能です。
20店舗
※1 2025年12月調査時点
※2 参照元:甲羅本店公式( https://www.kora.co.jp/franchise/)