フランチャイズへの加盟を検討するとき、本部から示される収支の試算には、ある時点の賃金水準を前提にした人件費が組み込まれています。一方で、最低賃金は毎年度改定されており、令和8年度は全国加重平均で1,177円となりました。ここでは、令和8年度の改定内容を確認したうえで、時給の上昇が加盟店の収支にどう影響するのかを仮の数値で整理し、加盟前に確認しておきたいポイントを解説していきます。
厚生労働省は令和8年9月3日、令和8年度の地域別最低賃金について、全国加重平均額が1,177円(昨年度1,121円)となり、56円引き上げられると発表しました。引上げ額の56円は、昨年度の全国加重平均の約5.0%にあたります。
金額は都道府県ごとに異なり、東京都の1,280円から宮崎県の1,085円まで幅があります。また、発効は令和8年10月1日から12月2日までの間に順次行われる予定で、都道府県によって時期が異なります。加盟を検討している店舗の所在地について、金額と発効日をあらかじめ確認しておきましょう。都道府県別の金額と発効予定日は、厚生労働省の別紙で確認できます。
| 項目 | 令和8年度の内容 |
|---|---|
| 全国加重平均額 | 1,177円(昨年度1,121円) |
| 引上げ額 | 56円(昨年度の約5.0%) |
| 都道府県別の改定額 | 東京都1,280円〜宮崎県1,085円(都道府県により異なる) |
| 発効予定 | 令和8年10月1日〜12月2日に順次(都道府県により異なる) |
参照元:厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金について」(令和8年9月3日、https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75950.html)、別紙「令和8年度地域別最低賃金額答申状況」(https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001745621.pdf)
最低賃金は、雇用形態に関係なくすべての労働者に適用されます。フランチャイズ店舗で働くパート・アルバイトのスタッフも対象です。対象となる賃金は毎月支払われる基本的な賃金で、残業代やボーナスなどは含まれません。日給や月給制の場合は、対象となる賃金額を時間額に換算して最低賃金と比較します。
最低賃金法では、使用者は最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない(第4条第1項)とされており、最低賃金額に達しない賃金を定めた労働契約は、その部分が無効になります(同条第2項)。地域別最低賃金に違反した場合には、50万円以下の罰金が定められています(第40条)。
中小企業庁の資料では、フランチャイズ契約は本部と、独立した事業者である加盟店との事業者間の契約と位置づけられています。スタッフを雇用する場合の雇用主は加盟店自身となるため、最低賃金を守る立場にもなります。賃金の上昇に対して、本部がどのような支援を行うかは契約や本部によって異なるため、加盟前に確認しておきたい点です。
参照元:厚生労働省「最低賃金制度」特設サイト(https://saiteichingin.mhlw.go.jp/)、最低賃金法(昭和34年法律第137号、e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000137)、中小企業庁「フランチャイズ契約を締結する前にチェックすべきポイント~経営者としての自覚を」(2025年6月、https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2021/download/r3fy-FC-all.pdf)
最低賃金の上昇が収支に与える影響は、損益分岐点で見ると分かりやすくなります。損益分岐点とは、利益がゼロ(売上高と総費用が等しい)となる売上の水準のことで、損益分岐点売上高は、固定費を「1-変動費率」で割って求められます。
ここでは、仮に月商700万円、変動費率35%(食材原価やロイヤリティなど)、月間の固定費400万円(人件費250万円、家賃90万円、水道光熱費その他60万円)の店舗を想定します。このとき、月間の営業利益は「700万円×(1-0.35)-400万円」で55万円、損益分岐点売上高は「400万円÷(1-0.35)」で約616万円(万円未満切り上げ)です。人件費250万円のうち、時給制スタッフ分を平均時給1,200円×月間1,500時間の180万円とします。
この店舗で、全国加重平均の引上げ額である56円を、時給制スタッフ全員の時給に一律で上乗せした場合を試算したものが次の表です。賃上げ前の営業利益と固定費は、いずれの行も同じとして、時給制スタッフの月間総労働時間だけを変えて増加額を比較しています。
| 時給制スタッフの月間総労働時間(仮) | 月間の人件費の増加額 | 月間営業利益 | 損益分岐点売上高(月) |
|---|---|---|---|
| 賃上げ前(基準) | - | 55万円 | 616万円 |
| 1,000時間 | 5.6万円 | 49.4万円(約10%減) | 624万円(+8万円) |
| 1,500時間 | 8.4万円(年間100.8万円) | 46.6万円(約15%減) | 629万円(+13万円) |
| 2,000時間 | 11.2万円 | 43.8万円(約20%減) | 633万円(+17万円) |
56円の上昇は、平均時給を1,200円とすると約4.7%にあたります。同じ時給の上昇でも、時給制スタッフの労働時間が多い店舗ほど利益への影響は大きくなります。たとえば月間1,500時間の場合、増加分の8.4万円をまかなうには、月商を約12.9万円(約1.8%)増やす必要があります。この計算では、変動費率35%に食材原価やロイヤリティの売上連動分が含まれるものとして、増えた売上のうち65%が利益に残る前提を置いています。
この試算は、全国加重平均の引上げ額を全員の時給に一律で上乗せした例であり、実際の引上げ額は都道府県によって異なります。また、社会保険料の事業主負担や、既存スタッフの時給見直しに伴う増加は含んでいないため、実際の人件費の増加額は、この試算より大きくなる可能性があります。数値はすべて説明のための仮定であり、実際の店舗の収支や相場を示すものではありません。
参照元:中小企業基盤整備機構「J-Net21 損益分岐点の計算方法と経営改善に向けた活用方法を教えてください。」(https://j-net21.smrj.go.jp/solution/qa/accounting/Q0240.html)
中小企業庁の資料では、本部から売上予測を示された場合に、どのようなデータに基づいているのかを納得がいくまで説明を求めること、また収益予測は売上を最小に、必要経費を最大に見積もることが大切だとされています。また、既存店舗の収益の平均値等から作成したモデル収益を示す場合は、それが予想売上げ等ではないことを加盟希望者が十分に理解できるよう対応する必要があるとされています。
最低賃金は毎年度改定されるため、試算が作成された時期によっては、最新の賃金水準が反映されていない場合があります。人件費に関しては、次の点を確認しておくと、試算の前提を自分の数字に置き換えやすくなります。
| 確認項目 | 確認したい内容 |
|---|---|
| 試算の時点と賃金の前提 | 試算がいつ作成されたか、令和8年度の改定が反映されているか、どの地域の賃金を前提にしているか |
| 人件費の内訳 | 時給制スタッフの時給・月間の総労働時間・社員の人件費が、それぞれどのように置かれているか |
| 賃金が上がった場合の見直し | 人件費の前提を変えた場合の試算を示してもらえるか |
| ロイヤリティの算定方式 | 売上歩合方式か定額方式か、売上に応じて支払額が変わるか |
| 価格設定の扱い | 値上げなどの価格設定を加盟店が判断できるのか、契約でどう定められているか |
| 本部の支援 | 採用・定着の支援や省人化の仕組みなど、賃金上昇への対応を本部が行っているか |
契約前に交付される法定開示書面や契約書とあわせて、これらの内容を書面で確認しておくと、加盟後の見込み違いを減らしやすくなります。
参照元:中小企業庁「フランチャイズ契約を締結する前にチェックすべきポイント~経営者としての自覚を」(2025年6月、https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2021/download/r3fy-FC-all.pdf)
国の支援制度として、厚生労働省の業務改善助成金があります。生産性向上に資する設備投資等を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、設備投資などにかかった費用の一部を助成する制度です。令和8年度は中小企業・小規模事業者が対象とされており、大企業と密接な関係を有する企業(みなし大企業)は対象外とされています。
利用にあたっては、交付決定前に助成対象設備を導入した場合は助成の対象にならないとされている点に注意が必要です。また、令和8年度の申請期間は、令和8年9月1日から、申請事業場の都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日または11月30日のいずれか早い日までとされています。発効日が早い都道府県では、受付期間がすでに終わっている可能性があるため、早めの確認をおすすめします。
助成額や助成率、細かな要件はコースや年度によって異なるため、ここでは触れません。フランチャイズ加盟店が対象になるかどうかも個別の要件によって変わるため、申請を検討する際は、都道府県労働局の雇用環境・均等部室や、厚生労働省のコールセンターに確認しましょう。助成金は交付決定が前提となる制度です。加盟前の収支試算には組み込まず、使えた場合の上積みとして考えておくとよいでしょう。
参照元:厚生労働省「業務改善助成金」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html)、厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001693416.pdf)
最低賃金は毎年度改定されるため、加盟を判断するときは、現在の賃金水準だけでなく、賃金が上がった場合の収支も合わせて確認しておくことが大切です。具体的には、次の3つを進めておくとよいでしょう。
1つ目は、店舗を出す予定の都道府県について、令和8年度の改定額と発効日を確認することです。2つ目は、本部の試算の前提を自分の数字に置き換え、時給・労働時間・売上を変えた複数のケースで損益分岐点と営業利益を試算することです。3つ目は、損益分岐点を下回る状態が続いた場合に、見直しや撤退をどの段階で判断するかを、契約前に考えておくことです。
あわせて、人件費の金額だけでなく、スタッフを確保し続けられるかどうかも収支に影響します。採用・定着の考え方や、撤退を検討する際の基準については、関連する記事もご確認ください。
令和8年度の最低賃金は、全国加重平均で1,177円(56円の引上げ)となり、令和8年10月1日から12月2日までの間に都道府県ごとに順次発効します。時給制スタッフの労働時間が多い店舗ほど、賃金上昇の影響は収支に大きく表れやすくなります。本部の試算が、いつ・どの地域の賃金を前提にしているのかを確認したうえで、賃金や売上が変わった場合の収支も自分で試算し、納得したうえで契約に進むようにしましょう。
フランチャイズ・ガイドラインで契約時のチェックポイントを見る
選ばれるレストランになるためには、まずは商圏内のターゲット需要を捉えることが、後発参入でも安定した収益基盤を築くポイントです。
そこで、本サイト「愛されて稼げる!レストランフランチャイズガイド」では、来店動機が明確な「ファミリー向け外食」「デート・女子会」「法事・宴会」の各領域において、おすすめの3ブランドを紹介しています。ぜひ参考にしてください。
選ばれる店になるためには、まずは商圏内のターゲットの需要を捉えることが、後発参入でも安定した収益基盤を築くポイントです。 そこで、来店動機が明確な「ファミリー向け外食」「デート・女子会」「法事・宴会」の各領域において、おすすめの3ブランドを紹介します。(FC店舗数は2025年12月末日時点のものです)
ファミリー向け外食需要
すかいらーくグループのインフラを活用できる全国唯一のファミレスFC。約3,100店舗の規模を活かした効率的な調達(※1)に加え、遠方出店も物流費は本部が負担。大手ならではの強みで安定経営を支援。
看板の「弾丸ハンバーグ」を中心に、スイーツ・キッズメニューが充実し、家族連れ外食需要だけでなくカフェ需要にも対応。全時間帯での集客が期待できます。
26店舗
デート・女子会需要
都市部を中心に出店するイタリアンバル。100種類以上のワインや選べるピザ・パスタが売りで、コアターゲットである20~40代の男女から支持されており、デートや女子会の需要に対応しています。
ドリンクはセルフスタイル、フードは仕込み済みのものを温めて盛り付ける方式を採用。人件費を抑え、収益率を高めるオペレーションを実現しています。
3店舗
法事・宴会需要
片道1時間の超広域商圏をカバーする、創業50年以上の歴史と実績を誇るカニ料理専門店。
郊外の広大な敷地を活かせる大型店舗FCで、七五三や還暦祝いといった慶事、法事などの「ハレの日需要」を獲得します。
予約中心で客単価5,000円(※2)を実現しており、流行に左右されない堅実なビジネスモデルを構築することが可能です。
20店舗
※1 2025年12月調査時点
※2 参照元:甲羅本店公式( https://www.kora.co.jp/franchise/)